厳しい計量法の規制
度量衡(計量の基準を定めた制度)は洋の東西を問わず、古代文明のいにしえから存在していました。わが国に目を転じると、日本史の教科書には、702年に文武天皇が唐の制度を導入して計量単位を統一したことや、天下統一を遂げた豊臣秀吉が太閤検地において、全国統一の竿(長さ)や枡(容積)を採用したことが書かれています。国づくりと人々の暮らしに必要不可欠な計量法の規制についてご紹介します。
はかりは経済取引の重要な基盤
取引に使用する計量単位が食い違っていたらスムーズな商取引はできませんね。現行の計量法では、メートル法由来のSI国際単位系以外の単位を取引・証明に使用することを原則禁止としています。(特殊な計量においては例外的に許容、宝石の質量のカラットや真珠の質量のもんめ等)また、計量単位が同じでも、売主のはかりで計量した質量値と買主のはかりで計量した質量値が異なれば、公正な売買取引はできません。そこで計量法は取引・証明に使用するはかりを特定計量器として技術的な規制をかけています。このような規制は、はかりが経済取引における重要な基盤であることを示しており、違反行為には罰則もあります。
古来よりある計量法の過酷な罰則
はかりの重要性から、その信頼性を毀損する偽造や変造は昔から重罪でした。世の中の経済秩序を混乱させるためです。江戸時代に秤や枡の偽造をした者は「市中引廻しの上磔獄門」という残忍な死刑で処断されました。現行の計量法においても、計量器でないもの(例えばバケツ)や検定証印等が付されていない特定計量器を取引・証明に使用すれば、6か月以下の懲役刑もしくは50万円以下の罰金刑に処せられます。
現行計量法の規制
国内の規制をみる前に、まずは国際ルールについて確認します。経済取引のグローバル化にともない各国の計量器の技術基準を調和させる必要がでてきました。そこで各国は国際法定計量機関(OIML)に加盟して、国際ルールの確立と各国の国内規格への移植を進めてきました。一例を挙げると、わが国の非自動はかりの技術基準は、OIMLの国際勧告R76-1の内容を日本産業規格(JIS)の B7611-2に移植して定めています。そして法律の建付けとしては、計量法令がJISを引用するという構成を採っていますので、日本の計量法の技術基準は国際ルールに整合している訳です。はかりの公差(許容される誤差)をはじめ、偏置荷重(はかりの偏った位置に荷重したときの性能)、繰り返し性(同一荷重による数回の計量結果の間の差)、クリープ特性(荷重を加えた直後の表示値と一定時間経過したときの表示値との差)などが国際ルールに準拠して厳格に定められています。さらに計量法では、型式承認、指定製造事業者、計量士、適正計量管理事業者など、わが国特有の制度についても定めています。取引の基準を提供する特定計量器は、経済社会の基盤をなす公器であると同時に一般消費者の利益に直接影響を及ぼすため、その製造、販売、修理について厳しい規制が及びます。このことは今も昔も変わりません。