はかりのはなし

はかりと重力加速度

はかりを正しく使うには、「誤差」を発生させる要因を知っておくことが大切です。その要因の一つが「重力加速度」です。国際法定計量機関(通称:OIMLInternational Organization of Legal Metrology)の国際勧告でも、はかりとは「任意の物体の質量を、その物体に作用する重力を利用して測定するために使用される計量器」と定義されており、「重力」ははかりにとって大変重要な意味を持っています。

 

 

「質量」と「重量」の違い

はじめに、質量と重量の違いについて理解しましょう。「質量」とは、「その物体を構成している物質の量」のことで、単位はkgです。そして「重量」とは、「その物体に作用する重力の大きさ」で、単位はNで、質量に「重力加速度」を乗じて計算される量のことです。 日常的には「重量1kg」と言いますが、その「重量」は「質量」の意味であり、厳密には質量と重量は違うものなのですね。 わかりやすい例を挙げましょう。質量1kg (1,000g)の分銅があります。これを、地球と月で同じはかりではかると月では軽く表示されます。地球では1kg(1000g)と表示されるのに、月でははかると167gと表示され、地球の約6分の1の重さとなってしまいます。

はかった分銅の「質量」は地球でも月でも1kgに間違いありません。しかしその重さは、はかる場所の「重力」によって変わるのなのです。

はかりと重力加速度

上の例で使ったはかりは、地球の「重力」のもとで1kgと表示されるように設定されていました。これは極端な例でしたが、同じことが地球の上でも起こります。地球上での重力も、緯度と高度によってわずかに異なってきます。つまりどういうことが起こるのかというと、下の絵をご覧ください。

大阪で10kgの質量のものをはかった時に10.000kgと表示するようにはかりを設定したにも関わらず、そのはかりを稚内に持って行くと、10.009kgと表示され、那覇にもっていくと9.994kgと表示されます。これは、大阪、稚内、那覇のそれぞれでの重力が異なることから発生するのです。

球体である地球は回転しています。北極や南極付近と赤道付近では、地軸からの距離が異なるため、重力加速度も異なります。もちろん、月ほどの大きな差ではありませんが、例えば、日本の場合、緯度1°に対して、約1/10000の変化があります。従って、調整された地区(緯度)から移動して別の地区で使用する場合、わずかに誤差が生じるのです。また、高度による重力加速度の変化は、1000mあたり約1/3000程度あります。これもわずかな差ではありますが、はかりに影響を及ぼす要因になります。

はかりメーカでは、はかりが使用される地区(県別など)に基づき、あらかじめこの重力加速度を調整してからお客様にお届けするものがあります。はかりを購入する際に、はかりの使用地を教えてくださいとお願いするのはこのためです。また、はかりを違う地域に移設して使用されたりする場合も、この点に注意頂く必要があります。


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